Perspective◆展望
糖尿病と遺伝
𠮷岡 成人
1
1NTT東日本札幌病院 糖尿病内分泌内科
pp.559
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200706
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糖尿病は「遺伝因子」と「環境因子」の双方が関連して発症する疾患です.しかし,1型糖尿病,2型糖尿病においてどのような遺伝子因子がどのように関連して糖尿病を発症するのかについて,わたしたちの頭のなかがきちんと整理されているわけではありません.そこで,今回の特集では糖尿病と遺伝について患者さんから質問を受けた時に,正確で適切な回答ができるように読者の皆様の知識をコンパクトにまとめていただくことを目的として企画いたしました.
日本人の糖尿病患者の大部分を占める2型糖尿病では,インスリン分泌能が欧米人の1/2程度に低下しているという「遺伝的」な要素と,第二次世界大戦後の食事やライフスタイルの変化という「環境因子」の双方に,高齢化(加齢)という「時間」の要素が関与して発症すると考えられます.環境因子として最も問題となるのは肥満で,体重の増加は脂肪細胞の増加,肥大をもたらします.過食と運動不足によって肥満となっても,十分なインスリン分泌能があれば糖尿病にならずにすみますが,ある時期を超えるとインスリン分泌ができなくなり(インスリン抵抗性が破綻をきたして)糖尿病になってしまいます.臨床的には,20歳前後の体重よりも20kg以上増加すると2型糖尿病を発症しやすくなりますし,糖尿病の家族歴がある場合には5〜10kg程度の体重増加でも糖尿病を発症します.「家族歴」という語彙の背景には,広い意味では,家庭内における食事や運動などの毎日の習慣も含まれると考えられます.
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