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New Books 病を引き受けられない人々のケア—「聴く力」「続ける力」「待つ力」
花房 俊昭
1
1大阪医科大学・内科学Ⅰ
pp.641
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200212
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本書は,糖尿病患者の心のケアにおいてわが国の第一人者である石井 均先生が,雑誌『糖尿病診療マスター』で行われた対談の中から,9名の方々との対談を選んで集めたものである.そのうち8名は糖尿病を直接の専門とされる方ではない.対談者の専門分野は異なっているが,いずれもその道を究めた達人である.石井先生を聴き手として繰り広げられるこれらの対談では,石井先生ご自身の,「医療者として糖尿病患者の心理をどのように読み解き,どのように対応すべきか」という問い・悩み・迷いがそれぞれの対談者に投げかけられる.それに対し,人間という存在にそれぞれの専門的側面からアプローチしている各対談者が,自らの経験・学識・人間性に裏打ちされた深い洞察を踏まえ,見事に応えられる珠玉の言葉が随所にちりばめられている.相互啓発とはこのような対話をいうのであろう.各対談の最後には要約があり,各対談者の語られたキーワードが再掲されていることも,内容の理解を深めるのに役立っている.
本書を読んで私が初めて知ったことも多い.現在,石井先生が提唱し主導されている「糖尿病医療学」が,今は亡き河合隼雄先生との対談の中で河合先生が語られた「『医療学』を創れ!」という言葉にその原点があり,河合先生に背中を押される形で実現したことを知った.また,現 日本糖尿病学会理事長であり糖尿病学研究の中心となっておられる門脇 孝先生が,若き医師時代に多くの糖尿病患者さんと真摯に向き合われた診療姿勢にも感銘を受けた.
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