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症例1 75歳 女性
現病歴:55歳時からの2型糖尿病で64歳から当院に通院し,食事・運動療法とSU薬(グリクラジド20mg)でHbA1c 6%台と良好なコントロールで推移していた.66歳時に変形性股関節炎に対し手術を受けその後転院しリハビリも行ったが,運動量が減少し1人では外出しなくなり,術後1年頃にはHbA1c 7%台とやや悪化した.また,その頃より「物忘れが激しい」との訴えがあり脳神経内科受診したところ,脳血管性認知症と診断された.その後,HbA1c 7%後半~8%台であったため,SU薬の変更・増量や,再度の栄養指導や内服薬の追加を行ったが,血糖コントロールは同様のまま経過した.70歳時より1人で通院の際に帰宅困難になった等の問題があり,心配した夫が外来に付き添うようになった.本人だけが外来に来ている時は,間食は否定していたが,夫の話から,家族から止められているにもかかわらず自宅で間食をしていることが判明した.本人は食べたことを忘れてしまっているため,外来での聴取が困難であったと考えられた.内服も忘れてしまうことが多いことがわかり,夫が管理することとなった.
しかし,なかなか血糖コントロールは改善せず,73歳時にはHbA1c 10.8%,FBS 341mg/dLまで悪化したため,治療の全体的な見直しのため入院となった.入院時は1,400kcal(26.8kcal/iBW)の食事療法のもと,血糖値は朝食前174mg/dL,食後2時間294mg/dL,昼食前203mg/dL,食後2時間271mg/dL,夕食前164mg/dL,食後2時間284mg/dLであり,間食をしなければ外来受診時ほどの高血糖にはならなかった.入院中は,認知症のため畜尿ができず尿中Cペプチドの1日量は測定できなかったが,空腹時Cペプチドは3.5ng/mLであり,インスリン分泌能は比較的保たれていると考えられた.自宅では認知症のため食事療法の徹底は困難と考えられ,著明な高血糖の予防と糖毒性の解除のために,夫にグラルギン6U注射を朝に行ってもらうBOT療法を導入した.
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