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症例 85歳 男性
主訴:右季肋部痛,嘔吐.
既往歴:2004年4月に下肢動脈閉塞症にて右下肢切断術,脳梗塞後遺症(不詳).
家族歴:糖尿病の家族歴は不詳.
生活歴:数年前からベッド上生活.
現病歴:2型糖尿病の治療開始時期は不明であるが,介護老人保健施設へ入所中でグリベンクラミド® 2.75mg/日で加療されていた.2009年8月中旬から右季肋部痛,嘔吐出現し,3日後に当院受診した.
身体所見:JCSⅠ-3,体温37.7℃,血圧136/67mmHg,脈拍98回/分,SpO2 98%(room air).眼球結膜は黄疸なく,眼瞼結膜は貧血なし.呼吸音,心音は正常.腹部は右季肋部に軽度圧痛あり,反跳痛・筋性防御なし.
血液検査所見:随時血糖値238mg/dL,HbA1c 8.2%,WBC 10,300/μL,Hb 12.1g/dL,Plt 15.9万/μL,CRP 25.53mg/dL.T-Bil 0.5mg/dL,D-Bil 0.3mg/dL,AST 20IU/L,ALT 19IU/L,LDH 223U/L,ALP 328U/L,γ-GTP 26IU/L,Amy 58U/L,BUN 64mg/dL,Cr 1.9mg/dL,尿酸9.1mg/dL,HDL-C 41mg/dL,LDL-C 106mg/dL,TG 97mg/dL,尿蛋白(+/-),尿糖(-),尿ケトン(-).
画像所見:腹部超音波検査(US)では,図1のように胆囊炎の所見であった.腹部CT所見を図2に示す.MRCP検査では,明らかな胆管結石は認めなかった.
経過:発熱と腹痛も軽度であったため,外科とも相談のうえ脱水の補正と抗菌薬点滴の保存的治療とした.しかしながら,翌日38.5℃の発熱と腹痛増悪を認めたため,胆囊穿孔・胆汁性腹膜炎が疑われた.保存的治療では治療困難と考え,同日,外科にて緊急腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.胆囊は穿孔を生じており,胆汁混じりの排膿が腹腔内に流出し,肝右葉下面にまで達していた.摘出した胆囊内部には小結石を多数認めた.胆囊切除標本肉眼所見では,粘膜面が茶褐色に変性していた(図3).病理組織像では粘膜は全層性壊死像を認め,壊死性胆囊炎であった(図4).術後経過は術後肺炎をきたし長期の入院加療を要したが,第74病日に軽快し退院となった.
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