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手技の簡略化は「安全」と言えるのか?
1型糖尿病患者にとってインスリン療法は必須の治療であり,インスリン自己注射(以下,自己注射)を生涯継続することが求められる.したがって,インスリン注入デバイス(以下,デバイス)や注射針(以下,針)の使用性は極めて重要な因子であり,これがコンプライアンスやquality of life(QOL)に大きく影響するものといえよう.しかし,使用性の向上あるいは便宜性を高めるために操作や手技を簡略化してもよいということではない.「モノ」であるデバイスや針を上手に使用できるスキルも,毎日の自己注射において重要なポイントになる.
たとえば,自己注射の操作項目のなかで絶対に守らなければならないものは「単位設定」であることはいうまでもない.すると,操作を簡略化するためには「空打ち」や注入後の「針の取り外し」はしなくともよいということになるのだろうか.残念ながらそうではない.「混和」や「空打ち」,そして「注入」などが不十分の場合,結果的に注入インスリン量がばらつく原因になる(Box 1).「混和」は,懸濁インスリンの濃度を均一にする操作である.「空打ち」は,空気の排出,デバイスの故障や異常を未然に感知する操作である.インスリンカートリッジ内に多量の空気が存在すると,注入精度がばらつきやすくなる1).数年前に,針に潤滑剤が詰まっていたために回収になった事例があった.しかし,普段から空打ちを行っていれば,そのような針詰まりにも慌てることはない.このように,一つひとつの操作には適正使用に関する意味がある.臨床では操作をどうしても覚えられないような場合,操作を簡略化するケースがある.しかし,このような重要な意味のある操作をはじめから簡略化してもよいということではない.
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