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Introduction to Diabetic Patient Management●糖尿病医療学入門 第3回
血糖コントロールとは(1)―目標の変遷とその指標
What is blood glucose control?
石井 均
1
1天理よろづ相談所病院 内分泌内科
pp.307-310
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415100595
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□糖尿病治療においては血糖をコントロールすることが主要な目標である
糖尿病は「インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群」である.適切な治療が行われない場合,高血糖に基づく症状が出ることがあるし,慢性的に年余にわたる高血糖や代謝異常が続けば,細小血管症(網膜症,腎症,神経障害)や大血管症(脳卒中,心筋梗塞,狭心症,糖尿病足病変)を起こし,患者の生活の質(QOL)が低下する.また,平均寿命や健康維持年数も短縮する.
これらの合併症を予防し,非糖尿病者に近いQOLと寿命を保つためには血糖をコントロールしていくことが重要である.インスリン製剤が糖尿病治療に適用できるようになったのは1922年であるが,早くも1930年代にはインスリン治療を行っていても網膜症や腎症を発症することがあると報告されている.しかしながら,どの程度の血糖コントロールをすれば慢性合併症が予防できるかについては長期にわたって議論が繰り返されてきた.その争点を突き詰めれば,非糖尿病者と同程度の厳格な血糖コントロールが必要か,あるいはその時代の治療技術から考えられる常識的なコントロールでよいかということである.治療上きわめて重要なこの問題に対して,科学的根拠に基づく指針が得られるようになったのは糖尿病治療の歴史からみればごく最近のことである.
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