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アクロメガリー(Tips 1)は「気づきの病気」であり,インスリン抵抗性の糖尿病を合併しやすい.
本稿では最近経験したアクロメガリー症例を提示し,診断と治療のポイントを解説したい.
Case:55歳女性
7年前に検診で高血糖を指摘され近医で経口薬治療を受けた.血糖コントロール不良のためインスリン治療が導入された.アクロメガリーに関する新聞記事を見て心配となり,成長ホルモン(GH)およびインスリン様成長因子―1(IGF-1)の測定を主治医に依頼し,両者とも高値(GH=18.8 ng/mL,IGF-1=812 ng/mL)のため当院を紹介受診した.15年前からいびき,10年前から咬合不整,顔貌変化があり,指輪が入らなくなった.5年前に閉経,4年前から発汗過多がある.頭痛,高血圧はない.1年前に結腸癌の手術を受けた.父親に糖尿病,脳梗塞がある.ノボリン(R)20R朝12単位,夕18単位にてHbA1C7.5%であった.
受診時162.5 cm,63.0 kg,BMI 23.9.血圧137/85 mmHg,脈拍65/分整.皮膚は湿潤,発汗過多があり,鼻翼の拡大と口唇の肥厚など先端巨大症様顔貌,四肢末端肥大,巨大舌を認めた(Box 1).
ホルモン基礎値では,空腹時血糖137 ng/mL,C-ペプチド2.3 ng/mL,GH 17.4 ng/mL,IGF-1 906 ng/mL,プロラクチン65.8 ng/mL,LH<0.1 mIU/mL,FSH 0.4 mIU/mL,E2<10 pg/mL,fT4 1.0 ng/dL,TSH 0.71 mU/mL,ACTH 54 pg/mL,コルチゾール9.1 mg/dLであった.
糖尿病があるため経口糖負荷試験は行わず.GHはTRH試験で頂値269 ng/mLと奇異的増加反応を示し,ブロモクリプチン負荷で4時間値3.7 ng/mLと抑制された.オクトレオチド負荷でGHは6.5 ng/mLと抑制されたが,プロラクチンは不変であった.
頭部MRIで下垂体右側~海綿静脈洞にかけて9×14 mmの緩徐に造影される腫瘍像を認めた(Box 2).術前にオクトレオチド(サンドスタチン皮下注製剤)100 mg/日投与するが腫瘍は縮小せず肝機能障害が出現した.経蝶形骨洞的下垂体腺腫摘出術(TSS)を施行し,GH 6.9 ng/mL,PRL 33 ng/mLと低下したが,IGF-1は556 ng/mLと変わらず,カベルゴリン治療を開始した.術後,ノボリン(R)20R 1日6単位に減量し,血糖コントロールは良好であった.病理組織ではGHおよびPRLの同時産生下垂体腺腫であった.その後,残存腫瘍に対して再手術し,GH,IGF-1の正常化が得られた.糖尿病もインスリン治療なしでHbA1C6.6%と改善した.
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