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第1部『実践と報告』では,福岡県阿部内科医院看護師鈴木鈴子先生がCDEの立場から「実践報告」をし,さらに西落合診療所院長松下昌雄先生が精神科医の立場から「現状報告」をしました.第2部「症例呈示」では,東京女子医科大学糖尿病センター助教授内潟安子先生が24歳の1型糖尿病症例を題材に,1型糖尿病患者に対する療養指導のコツについて発表されました.そして第3部「特別講演」では,「動かない患者さんへのアプローチ―心療内科専門医としての視点から―」というタイトルで,国立精神・神経センター精神保健研究所心身医学研究部部長小牧元先生が発表されました.今回は紙面の関係上,特別講演の内容についてのみ報告させていただきます.
小牧先生はまず摂食障害患者と「動かない糖尿病患者」に共通の認知的側面として,「自己評価が低い(学習性無力感)」があることを指摘し,学習性無力感に影響するファクターとして,抑うつ・不安,感情負担感,治療満足感,自己効力感,アレキシサイミアを挙げられました.そして,こうした患者へのアプローチでは,ラポール(患者が安心して話せる治療的信頼関係)を形成することが最も重要であり,そのためには傾聴や共感が大切であると述べました.次にProchaskaのモチベーション5段階モデルを説明してから,そうした患者へのアプローチ方法のポイントについて,①患者の「信念」を現時点では真実だと受け入れる(不適切だと思われても,患者の人生における「学習」を正しいと受けとめる).②自己コントロールがうまくいっていない原因に対する認識の共有を目指す.③「認知パターン」への気づき.④将来への展望:学習性無力感の強い患者では,治療者の信念や人生に対する考え方が問われる.⑤周囲のサポート:家族など,周りで治療に協力してくれる人とそのレベルを決める,と述べ,さらに「認知パターンへの気づき」のポイントとして,患者が「当たり前」として使っている言葉の意味を吟味して「誤った信念」がないかどうか吟味すること,セルフコントロールが悪化しても,説教をするのではなく,患者自身が自問自答し,自らの生活を再検討することが可能となるような質問をすることが大切と説明され,こうしたスタイルを「ソクラテス式問答形式」と表現されました.
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