"なぜ診断できないか"を科学する・12(最終回)
既に広がった癌
江村 正
1
1佐賀医科大学総合診療部
pp.1159
発行日 2002年12月15日
Published Date 2002/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903688
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癌を大病院の総合診療部で診る場合は,次の2つのパターンが多い.1つは,難治性の腰痛,リンパ節腫脹,胸水,腹水などで来院もしくは紹介され,最初から癌が疑われて検索し,進行癌が見つかるパターンである.病的骨折で紹介されることもある(最近の症例は,肝臓癌による腫瘤形成性の骨転移であった).悪性黒色腫がリンパ節腫脹で見つかったり,上肢の静脈血栓症で甲状腺癌が見つかったりしたこともある.転移巣の症状が先に出現しているわけで,それらのほとんどはstage IVである.前立腺癌など化学療法が奏効するものであればよいが,原発巣を見つけても治療に結び付けられない場合も少なくない.もう1つのパターンは,入院時には癌を疑っておらず,診断がついていなかったが,その後の検索で,癌が既にあらゆる場所に転移した末期の症状と判明する場合である.
印象に残っている症例を2例呈示する.頭痛から原因不明の水頭症を起こして脳外科に緊急入院となった60代の女性.脳室―腹腔シャントを行ったが,意識障害と発熱,炎症所見が続くということで転科となった.診断の決め手になるものが得られず,結核性髄膜炎として治療を行っていた.入院中に吐血があったため胃内視鏡を行ったところ,進行胃癌が見つかり,水頭症は癌性髄膜炎によるものと判明した.入院前に頭痛以外に悪心・食欲不振があり,近医で胃内視鏡が行われていたが,びらん性胃炎であったと報告を受けていたため,本院での消化管の検索が遅れてしまった.転科後2カ月で死亡された.
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