JIM Report
知られていない第三の"栄養不良"
藤村 聡
1
,
高岸 壽美
2
,
福井 次矢
1
1京都大学医学部附属病院総合診療部
2日本赤十字社和歌山医療センター看護部
pp.66-67
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903445
- 有料閲覧
- 文献概要
栄養不良(栄養失調症)というと,われわれは発展途上国の飢餓問題を連想する.現在,世界中で十数億人が飢餓状態にあるといわれている.世界保健機関(WHO)の報告によると,先進国を含むすべての地球人の約半数は3つのタイプの栄養不良のどれか1つに当てはまる.1番目のタイプは飢餓で,2番目のタイプは,日本を含む先進諸国における"過食"である.肥満であることを示すBMI 25以上を示す者の割合は,米国では60%弱,英国では20%弱と報告されている.これは,糖尿病,心疾患など多くの生活習慣病のリスクとなる.発展途上国の"飢餓"と先進国の"過食"は,地球全体の南北問題として長年注目されてきたが,第三の栄養不良"微量栄養素不足"についての認識は十分でない.
微量栄養素とはビタミン・ミネラル・鉄・カルシウムなどであるが,そのなかでも,ヨード欠乏障害は頻度が高く,WHOの報告では,発展途上国130カ国において約7億4千万人(世界人口の13%)がヨード欠乏症を被っている.ヨード欠乏症のうち最も重篤なのは,クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)である.クレチン症は,ヨード摂取が十分な日本でも先天性代謝異常として偶然の確率で6,000~8.000人に1人の割合で出生するが,新生児マススクリーニングとして行われ,生後早期に治療されている.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.