Update '96
肥満
吉岡 成人
1
1市立札幌病院第1内科
pp.1089
発行日 1996年12月15日
Published Date 1996/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902034
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肥満におけるインスリン抵抗性の病態に腫瘍壊死因子(TNF-α)の関与が注目されている.TNF-αは異物刺激に対して単球やマクロファージから産生され,腫瘍細胞の増殖を阻止するサイトカインである,最近の報告ではTNF-αは脂肪細胞(白色脂肪細胞)でも産生されることが知られている.しかも,肥満動物の脂肪細胞ではTNF-αが増加し,体重減少に伴いTNF―αの産生が低下する.さらにTNF-αはインスリン受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害することで,インスリンのシグナル伝達を障害しインスリン抵抗性をもたらすと考えられている.
また肥満の成因の1つとして褐色脂肪細胞におけるβ3-アドレナリン受容体の機能低下が注目されている.褐色脂肪細胞は肩胛骨間や縦隔に分布し,熱産生作用を持ち,エネルギーを消費する脂肪細胞である.ヒトでもβ3-アドレナリン受容体の遺伝子異常と内臓肥満の蓄積,インスリン抵抗性,インスリン非依存糖尿病の早期発症などとの関連が検討されている.
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