忘れられない患者さんに学ぶ
研究の節目にはいつも患者さんがいた
松田 一郎
1
1熊本大学小児科
pp.579
発行日 1995年7月15日
Published Date 1995/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901549
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1958年大学院生の私に山田尚達教授が与えられたテーマは「酸塩基平衡」であった.「細かいdetailは自分でやるように」,それが当時のやり方だった.私は無謀にも細胞内pH測定を試みることにした.血液ガスですらまだ手動マノメーターを用いて測定しているころにである.「君,どうやって測定するのかね」,私は「DMO (5.5-Dimethyl-2.4-Ox-azolidinedidne)があれば何とかなります.薬学の教室に依頼して合成してもらえませんか」.幸い,薬学部の教授と山田教授が東京大学時代の知人であったので,DMOを合成してもらい目的とした仕事を無事終えることができた.この時,当然,腎臓での酸排泄,アルカリ再吸収のモニタリングが必要になるので,この手技も何とか可能にした.この仕事が後に患者の役に立つことになった.
Loweが初めてLowe症候群を発表した時,アシドーシスの原因は腎臓でのアンモニア産生障害を原因として記載していたが,私はそうではなく近位のアルカリ再吸収不全が原因であることを見いだし,Am J Dis Childに報告した.今では私の見解がとられている.
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