日常診療のOne Point Advice
急性肺塞栓症かな?とピンときたら
紀 幸一
1
1岡山大学第2外科
pp.315
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900798
- 有料閲覧
- 文献概要
肺塞栓症Pulmonary embolism (以下PE)は本邦でも増加傾向にある疾患の1つであり,突然発症し重症化し,早期診断が予後の明暗を分けると言っても過言ではない.しかし実際には,突然の胸内苦悶,胸背部痛あるいは呼吸困難を目前にして,まず疑うのは急性心筋梗塞か急性大動脈解離であろう.心電図をとっても,心筋逸脱酵素を調べても,胸部CTスキャンを撮影しても,診断の糸口がつかめず,いたずらに時間が過ぎ,患者の状態は悪化してゆく.PEは案外と思いつかないものであるし,もし思いついても,99mTcによる肺血流シンチグラムあるいは肺動脈造影となると,どの施設においても随時施行できる検査とは残念ながら言い難い.そこで,お勧めしたいのが,心エコー法である.カラーおよびパルスドプラ機能を兼備していれば,なお望ましい.
心エコー法にて,急性肺性心acute cor pulmonaleの像が観察されれば,PEと診断してよいと考える,具体的には,①右室拡大が著明であり,心室中隔は拡張期扁平化を呈する.これはBモード短軸像にて検出しやすく,左室よりも右室のほうが大きく拡張している場合もまれではない.②三尖弁逆流(TR)の検出.重症PEにおいてTRはほぼ必発であり,これはカラードプラ法により短軸像または四腔断層像を観察すればその検出は容易である.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.