特集 内科的治療か外科的治療か
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「虚血性脳血管障害」―内科の立場から/「虚血性脳血管障害」―外科の立場から
内山 真一郎
1
1東京女子医科大学脳神経センター神経内科
pp.227-228
発行日 1993年3月15日
Published Date 1993/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900770
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TIAの病因については,欧米では古くからMillikanら1)の提唱した,頸部動脈病変に由来する微小塞栓説が有力であったが,日本人では頭蓋内動脈病変が多いので欧米人とは病因が異なるのではないかという見解もあった.しかし,最近の多数例での系統的な研究によれば,TIAの主要な病因は,TIAの診断が正しければ,日本人でもやはり頸部動脈のアテローム性病変に形成される壁在血小板血栓の剥離による微小塞栓であると考えられる2)この事実は筆者ら3)の行った種々の血小板機能検査所見からも裏付けられており,TIAはアテローム血栓性脳梗塞(atherothrombotic stroke)の前段階で,同一スペクトラム上にある病態であり,血小板依存性疾患病態(plateletdependent disease state)と考えられ,小動脈病変に由来するラクナ脳梗塞(lacunar stroke)とは明らかに病因を異にする.したがって,TIAの再発や脳梗塞への進展の予防には抗血小板療法の適応があると考えられるが,最近欧米で行われたNASCETやECSTによれば,内頸動脈に70%以上の狭窄があるTIAや軽度脳梗塞例では抗血小板療法(アスピリン)を含む最善の内科療法よりも内膜摘除術による外科療法のほうが研究を途中で打ち切るほど明らかに脳梗塞発症率が低かったという.
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