法医学からみえる"臨床"・12【最終回】
パラコート入りジュースで狂言自殺?―中毒患者には毒物同定のことを忘れずに
高濱 桂一
1
Keiichi Takahama
1
1宮崎医科大学法医学教室
pp.256
発行日 1992年3月15日
Published Date 1992/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900389
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事例:1980年5月6日司法解剖.
県内を車で回って健康器具を宣伝販売しているセールスマン,男性33歳が5月5日の夕刻,意識もうろうの状態で通行人に助けを求め,救急車で病院へ搬入された.強心・昇圧剤の投与などで約1時間後に意識をとり戻した,当直医が事情を聴いたところ,セールスの途中でノドが渇き自動販売機でジュースを求めたところ,1本出てくるはずのジュースが2本出てきたので1本はその場で飲みほし,残り1本はそのまま車のダッシュボードに入れ,3時間ほど経って飲んだところ,数分後に気分が悪くなり,通行人に助けを求めたとのことであった.当直医は直ちに中毒を疑い,胃洗浄を行うとともに家族と警察にも連絡したが,意識不明となり,翌6日の朝方死亡した.他殺の疑いもあるとして警察では司法解剖を要請する一方,捜査を進めたところ,多額の借金があることや,最近不釣り合いに大きな生命保険に加入した事実などが判明し,狂言自殺の疑いがもたれた.
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