読者フォーラム
地域の症例
古川 誠二
1
Seiji Kokawa
1
1パナウル診療所
pp.695
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900222
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島の医療とエコーの有用性
鹿児島県の最南端にある人口約7千の与論島に赴任して3年になる.筆者はプライマリ・ケア医を自称しているが,島の現在の医療状況はあまりにも厳しい.X線写真すら満足にとれない中で,未熟な私の診療を支えてくれる超音波断層装置の存在は大きい.私の外来診察室には,一般診察用と超音波検査用の2台の診察台がある.それは超音波検査(以下USと略す)が必要な時には直ちにその場で検査し,早急に結論を下すためと,自分自身が面倒がらずにきちんと診断する習慣をつけるためである.今回は急性腹症を中心に症例を紹介し,基本的エコー所見の解説もまじえてその有用性を強調し,私の「地域の症例」としたい.
症例1 78歳,男性.以前より労作時の呼吸困難が軽度あり.本年4月はじめ頃より歩行時心窩部痛,嘔気の症状が出現し当院受診.胸部では軽い心雑音あるもラ音なし.腹部触診では心窩部圧痛(-),肝脾腫(-)で特に腫瘤も触知せず.早速USを施行したところ,肝胆膵には特に異常を認めず.心窩部走査で胃全体の軽度の拡張があり,中央部分に一部high echo (+),その部に限局性の胃壁の肥厚を認めた.胃潰瘍の疑いで翌日胃内視鏡検査を行い,胃体上部にA2 stageの潰瘍を確認した.私の経験ではエコーによる胃潰瘍の診断は誤診が多いが,他の疾患を否定して不必要な検査をしないことと,胃内視鏡検査の必要性を説明するのに有用であった.
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