シネマ解題 映画は楽しい考える糧[83]
「A.I.」
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科社会医学講座医療倫理学分野
pp.459
発行日 2014年5月15日
Published Date 2014/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103220
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ロボットと倫理と愛と
本作は物語そのものが倫理的課題となっています.温暖化のため地球の多くの土地が水没してしまった未来.社会は妊娠・出産制限制度を敷いており,自由に子どもを持つことができません.スウィントン夫妻,特に母親のモニカは一人息子を亡くした後も諦めきれず,クライオニクスを利用して,いつの日か息子が蘇ることを夢見ています.そのことしか頭にありません.見かねた夫がたまたまロボット開発会社の職員だったこともあり,ある日,亡くなっている息子に似ている少年ロボットを連れてきました.人を愛することができる最新型人工知能(A.I.),デイビットです.外見は全く人間と変わりません.特別なインプットをすると所有者を愛するようになりますが,気に入らなければ返品可能です.
モニカは今でも冷凍保存状態の息子の蘇生を期待しています.最初は「息子の代用なんて」と拒絶していましたが,時が経つにつれデイビットにも愛着を持ち始め,大いに悩むことになります.しかしある日一大決心をして,デイビットに自分への純粋で永遠の愛情をインプットするのでした.突然モニカをママと呼び,彼女の胸に飛び込むデイビット.これで何事もなければハッピーなおとぎ話SFですが,人生うまくいきません.奇跡的に本当の息子が蘇るのです.
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