特集 Prediction rule―診療に役立つ臨床予測ルール
【総論】
臨床予測ルールClinical prediction rule(CPR)の基本知識と最近の動向
高橋 理
1
1聖ルカ・ライフサイエンス研究所 臨床疫学センター
キーワード:
診断
,
予後
,
予測モデル
,
多変量解析
Keyword:
診断
,
予後
,
予測モデル
,
多変量解析
pp.416-420
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102510
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臨床予測ルール(CPR)とは
臨床予測ルール(Clinical prediction rules:CPR)は,臨床決断ルール(Clinical decision rules)・予測モデル(Prediction model)・リスクスコア(Risk score)とも呼ばれ,日常診療の不確かさを軽減し,医療現場の医師や患者の意思決定をサポートする診断・予後予測ツールである1).医療現場でエビデンスに基づいた医療(EBM)が普及するに伴い,ニーズがさらに高まり,ここ数年で発表論文が急激に増加している(図1).それは,予後予測・診断に関する研究ではCPRが最もエビデンスレベルの高い研究デザインの一つとされているからである.
CPRは人を対象とした臨床研究を基に作成され,日常診療で容易に測定できる変数(病歴,身体所見,血液検査,画像所見など)を組み合わせることで,より正確で再現性の高い診断・疾患予後予測やリスク予測を,特定の健康イベント(心血管性疾患の罹患など)の絶対リスク確率として提示する.診断・予後予測は一つひとつの症状や身体所見からだけでは困難で,多数の相互に関連した複雑な予測因子の組み合わせからなる多変量アプローチが必要である.また,診断や将来の予後は不確かさを含むため,確率で表現される.たとえば,フラミンガムリスクスコアは,10年間に冠動脈疾患に罹患するリスクを男女別に5つの変数から計算し,高リスク群(>20%)に対して治療介入し,冠動脈疾患を予防する目的で利用されている.
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