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はじめに
前回は「鼻症状メイン型」として,咳・鼻汁・咽頭痛の3症状に注目し,そのなかでもとくに鼻症状(くしゃみ・鼻汁・鼻閉)が主症状であるカテゴリーに関してお話をしました.そのなかでも副鼻腔炎でのウイルス性か細菌性かの判断の仕方,抗菌薬の適応は限定される点を確認しました.
さて,今回は3症状のなかでも,とくに喉症状を強く訴えて受診するカテゴリーを考えてみましょう.つまり,「咽頭痛>咳,鼻汁」となる場合です.喉の痛みが主症状で,熱はあってもなくてもよいと考えてください.これは熱が無意味ということではありません.当然熱があればより感染症を示唆しますが,熱がないから感染症は否定的とはならないというスタンスが重要です.
咽頭痛は,日常診療ではきわめてよく遭遇する主訴です.アメリカでは年間2,100万人が咽頭痛を主訴に内科外来・救急外来を受診しており,約1,200万人が急性咽頭炎の診断となっているとされます1).咽頭痛という主訴にまぎれた重篤な疾患群もあり,常に警戒態勢を敷いておくべき主訴のひとつではありますが,内科外来ではほとんどの場合はそのような重篤な疾患ではありません.“Killer Sore Throat”(死の危険性のある咽頭痛)は見逃してはいけませんが,内科外来では決して多くはないのが現実と思います.
内科外来では,咽頭痛を主訴に受診しうる疾患は多岐にわたりますが,本稿では,抗菌薬適正使用の点で重要な咽頭炎での「細菌性 vs ウイルス性」の判断のコツを中心に,風邪という主訴で来やすい疾患のなかで,頻度や重篤性の側面からその周辺にある疾患(“Killer Sore Throat”,非感染性疾患でもcommonな亜急性甲状腺炎,感染性の咽頭炎の特殊型である伝染性単核球症)について考えてみたいと思います.
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