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はじめに
前回は「喉症状メイン型」として,咳・鼻汁・咽頭痛の3症状に注目し,とくに喉症状(咽頭痛,喉のイガイガ感)が主症状であるカテゴリーに関して話をしました.そのなかでも咽頭炎でのウイルス性か細菌性かの判断の仕方,Centorの診断基準の理想と現実やそれを飛び越えた臨床のコツなどを確認しました.さて,今回は3症状のなかでも,とくに咳症状(咳,痰など)を強く訴えて受診するカテゴリーを考えてみましょう.つまり,「咳>鼻汁,咽頭痛」となる場合です.咳が主症状で,熱や痰はあってもなくてもよいと考えてください.これは熱や痰が無意味ということではありません.当然,熱や痰があればより感染症を示唆しますが,熱や痰がないから感染症は否定的とはならないというスタンスが重要です.
この症状で来うる最も多い疾患は気管支炎で,90%以上が非細菌性で,5~10%でマイコプラズマ,クラミジア,百日咳などといわれています.気管支炎の炎症の首座である気管支は解剖学的には下気道となります.しかし,最も多いのはウイルス性の気管支炎で抗菌薬を必要としないself-limittedな感染症であり,いわゆる“風邪(ウイルス性上気道感染)”の一型としたほうがわかりやすいでしょう.よって,気管支炎は解剖学的には下気道ですが,臨床的には上気道感染の一型と考え,下気道感染を抗菌薬が必要な肺炎とするとわかりやすいのでそのようにさせてください.
このように,多くは抗菌薬の必要がないウイルス性気管支炎ということになりますが,臨床の現場でいつも困るのが肺炎との鑑別です.本稿では,抗菌薬適正使用の点でも重要な「肺炎vs気管支炎」の判断のコツについて考えてみたいと思います.
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