風邪の総合診療
[2]鼻症状メイン(鼻汁>咳,咽頭痛)
岸田 直樹
1
1手稲渓仁会病院総合内科・感染症科
pp.510-515
発行日 2011年6月15日
Published Date 2011/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102214
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はじめに
前回は「典型的風邪型」として,咳・鼻汁・咽頭痛の3症状に注目し,それが急性に同程度ある場合は多領域への感染を示唆し,ウイルス感染症の特徴であること,そしてその場合は自信をもって「風邪ですね」と言ってもよく,そこにPitfallはないという話をしました.
さて,今回はこの3症状のなかでも,とくに鼻症状を強く訴えて受診する症状のカテゴリーを考えてみましょう.つまり,「鼻汁>咳,咽頭痛」(>は症状の程度を示す)となる場合です.くしゃみ・鼻汁・鼻閉が主症状で,熱はあってもなくてもよいと考えてください.これは熱が無意味ということではありません.当然熱があればより感染症を示唆しますが,熱がないから感染症は否定的とはならないというスタンスが重要です.
実は,この鼻症状メイン型で見逃して大きな問題となる疾患はあまりありません.非感染性疾患としての一番の鑑別はアレルギー性・季節性鼻炎くらいでしょう.しかし,重要なのは,風邪診療での一番の悩みである「細菌性 vs ウイルス性」の判断です.つまりこのカテゴリーでは「細菌性副鼻腔炎として治療が必要な場合とは?」の判断,それに尽きます.外来診療での安易な抗菌薬使用は,耐性菌発生の原因となるなど抗菌薬適正使用の観点からは忌々しき問題です.実際,感冒後の副鼻腔炎では,ライノウイルスやパラインフルエンザなどのウイルス性がほとんどで,細菌性は0.5~2.0%といわれ1),抗菌薬はほぼ不要とされています.しかし,実際の現場では副鼻腔炎という疾患は,患者にとっても医師にとってもいまいちピンとこない疾患だと思います.今回は,このあたりを明確にしていければと思います.
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