構造と診断 ゼロからの診断学・10
現象をつかみとる難しさ
岩田 健太郎
1
1神戸大学医学部感染症内科
pp.64-69
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102083
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噛まずに飲み込む「ではのかみ」
■先日,アメリカに医学留学する関連の何とかセミナーというところで,少しおしゃべりしてきた.それは,「アメリカで起きていること」をどう咀嚼し,認識し,そして「与えられたセッティング」で「自分の言葉」でアウトプットするかが大事ですよ,という話であった.
■ぼくらの時代にはさすがに廃れてきたが,ぼくらよりちょっと上の世代の「アメリカ留学組」では,「咀嚼なし」のアウトプットが多かった.「アメリカではこうなっている」とそのままほかのセッティング(たとえば日本)でも応用させる.いわゆる,「ではのかみ」というやつだ.与えられたセッティングや文脈を読まずに,またアメリカでいかにそのような行動をとるに至ったのかという背景を顧慮せずに,丸呑みのまま,咀嚼なしである概念を吐き出し,持ち込もうとする.長良川の鵜のようである.セッティングや文脈にかみ合わない概念をそのまま持ち込まれるから,対立が起き,衝突が起きる.「アメリカではみんな屋内で靴を履いているから」と土足で畳に上がられてもねえ.
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