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私には,10年,20年以上も前に読んだ論文で,いつ,どこで,何をしている時に読んだのかを含め,今も鮮明な記憶として残っているものがいくつかある.そのひとつが,14年前,古色蒼然とした京都大学医学部総合診療部教授室で読んだ「Wachter RM, Goldman L:The emerging role of“hospitalists”in the American health care system. N Engl J Med 335:514-517,1996.」である.1980年代前半にボストンの病院,大学で勉強していた頃からの友人であるLee Goldmanが書いた論文であって,新たに効率的な医療提供体制を提言するものであったことは,わが国の大学病院の硬直化したシステムのなかで自分自身のふがいなさを感じていた私には鮮烈な印象を与えた.
その論文で提唱されていた新たな専門医が,本号で扱ったホスピタリストである.米国では,入院患者を対象とするGeneralist Physicianであるホスピタリストが過去15年間で2万人を超えるまでに増え,入院日数の短縮,医療費の削減,レジデント教育の質の向上など,より効率的な医療を提供してきていることが実証されている.高齢者に多い糖尿病や高血圧,脂質異常症,せん妄,電解質バランスへの対応,緩和ケアなどは,内科系の入院患者に限らず,外科系の入院患者にも必須である.手術を受ける患者では,術前術後のケアもホスピタリストが担当することも可能である.入院患者の診療では,安全性への目配り,診療の質の評価や改善,医師同士・医師以外の病院スタッフとのコミュニケーションなどもホスピタリストの扱う重要なテーマとなる.
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