特集 診療を変える新しい薬2010
【新しい作用機序の新しい薬】
アボルブⓇ(デュタステリド)―5α還元酵素阻害薬による前立腺肥大の治療
磯谷 周治
1
1帝京大学医学部泌尿器科学
キーワード:
5α還元酵素阻害薬
,
デュタステリド
,
前立腺容積の減少
,
前立腺がんの予防
Keyword:
5α還元酵素阻害薬
,
デュタステリド
,
前立腺容積の減少
,
前立腺がんの予防
pp.279-281
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101895
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前立腺肥大症に対する治療薬として新規に開発された5α還元酵素(5α-reductase)阻害薬のデュタステリドは,テストステロンから活性型アンドロゲンである5αジヒドロテストステロンへの変換を阻害する.これまでの知見からはデュタステリドの投与によって前立腺容積が緩徐に減少することが報告されており,その臨床効果として下部尿路症状および尿流量率の改善,および急性尿閉の発症率の低下,手術療法への移行の危険性が減少することが示されている1~4).また,5α還元酵素阻害薬であるフィナステリドにおいては前立腺がんの予防効果が示されており,同様の機序を持つ5α還元酵素阻害薬のデュタステリドでも同様の効果が得られることが期待されている5,6).
前立腺肥大症は組織学的には前立腺細胞数の増加であり,初期の尿道周囲に生じる前立腺腺増生が成熟した肥大結節へと進展する.肥大した前立腺は前立腺部尿道の閉塞を生じ,いわゆる良性前立腺閉塞(benign prostatic obstruction:BPO)や膀胱出口部閉塞(bladder outlet obstruction:BOO)を呈する.そのような尿道閉塞に対する膀胱平滑筋の反応として,膀胱平滑筋の肥大や膀胱肉柱形成が生じ,ひいては過活動膀胱(over active bladder:OAB)が引き起こされる.さらにその後,下部尿路を制御する神経回路にも変化を起こし,いわゆる下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)とよばれる排尿症状をつくり上げていくと考えられている7).
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