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乾癬は,浸潤性紅斑と鱗屑を伴う慢性炎症性疾患であり,病理組織学的に表皮の過剰な肥厚および過角化,好中球の表皮内浸潤,真皮の炎症細胞浸潤を特徴とする1).皮疹は,全身いずれの部位でも生じ,疫学的には男性が女性の約2倍多く,人種間では,ヨーロッパ人は2.5%,アフリカ人は0.05~3%,アジア人は0.1~0.5%と患者数に差がみられる2).患者は,本疾患の「病変の広範さと痒み」ゆえに,QOL,治療満足度の低下を招き,社会経済的安定性を著しく損なう.整容的な問題も,QOLと治療意欲をさらに低下させる要因となる2).(自己)免疫性,遺伝的病因がその発症に関与するが,本稿では病因論の詳細な解説は割愛する.
一方,乾癬のもっとも重要な特徴の1つは,Köbner現象をひきおこすことである.Köbner現象は,乾癬患者の皮膚健常部位に,創傷(痒みによる「搔破」や「擦過」および「荷圧」を含む)を起点とする新しい乾癬皮疹が生じることであり,Heinrich Köbnerが,1877年に報告したことで知られる3,4).Köbner現象は,創傷を契機に約25~30%と高頻度に発生するとされ5),頭部,肘頭部,膝蓋部,下腿,爪などに好発し,治療をより難渋化させる要因の1つと考えられている.
近年,乾癬の病態解明は急速に進み,tumor necrosis factor-α(TNF-α)/interleukin(IL)-23/IL-17A軸をターゲットとした生物学的製剤が登場した6~8).乾癬患者の症状は劇的な改善を示し,その臨床効果の高さから乾癬治療は完全なるパラダイムシフトを遂げたといっても過言ではない6~8).しかしながら,創傷と乾癬を結びつけるKöbner現象に関する病態は不明のままである.
本稿では,いまだ完全な解明に至っていないKöbner現象の機序をテーマに,われわれのin vitro Köbnerモデルを用いた研究結果9,10)を総括するとともに,とくに表皮細胞由来CCL20の重要性とその展望について述べる.詳細な研究データについては,文献9,10を参照されたい.
(「はじめに」より)
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