レビューでわかる! いまどき診療エビデンス[23]
急性腰痛,寝ているべきか,動くべきか?
紺野 慎一
1
1福島県立医科大学医学部整形外科
pp.1066-1069
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101310
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Q1 EBMの観点から腰痛治療をどのように考えるか?
EBMの観点からみると,従来から行われている腰痛治療のほとんどが科学的根拠の裏付けに乏しい.症状の増悪や慢性化には,早期から心理社会的因子が深く関与している(表1).従来の治療体系には,これらの点に対する配慮が不十分であったといわざるを得ない.さらに,医療従事者と患者との信頼関係などの人間関係や患者の性格が,腰痛の治療効果や患者の満足度,さらには免疫機能にまで大きく影響する.以上の観点から,治療の目的は症状を除去することではなく,もとの健康な状態になるべく早く復帰させることに置く必要がある.さらに,患者自身が治療方針の決定や治療に積極的に参加して,医療従事者とともに疾患に立ち向かうという患者中心の主体的な治療体系の確立が必要である.
主体的な治療体系の実践には,患者への情報提供と教育が必要である.すなわち,症状発生に関して,患者に理解できるように,個人の資質に合わせて正確な情報を提供する.同時に,重篤な疾患や明らかな神経障害が認められない場合には,早期の回復が期待できることを患者に説明して,安心させる.さらに,症状を緩和させるとともに,必要に応じて家庭や職場での生活様式や職場環境の改善を勧める.そして,医療従事者は,患者の生活様式や職場環境の改善に伴う患者の変化を常にチェックし,患者とともに改善点を確認し合うことが必要である.
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