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医学生の人生を変えた南米大陸縦断の旅
1952年のアルゼンチン,23歳の医学生エルネスト・ゲバラは親友アルベルトとともに南米大陸縦断の旅に出ます.二人はこの旅で1万km以上の距離を走破しました.恵まれた家庭に育ったエルネストは,恋人との再会と別離,共産主義者夫婦との出会い,破壊された古代文明訪問と貧窮する原住民との交流,アマゾン川に「閉じ込められている」ハンセン病患者たちとの触れ合いなどを通して社会の実態を目の当たりにし,医師としての使命感と南米大陸改革の必要性を自覚します.故郷から1万km以上離れたハンセン病施設で24歳の誕生日を祝った時,彼はもはやお気楽な医学生ではなく,南米大陸統一の夢を抱く改革者の第一歩を踏み出していたのです.旅が自分の世界しか知らなかった医学生に広い視野と深い問題意識を与え,主人公はさまざまな人々に出会い人々の苦しみや社会の矛盾に気づきます.
ご覧になるとわかりますが,この映画は前半と後半のコントラストが際立っています.前半の恋あり冒険あり若気の至りありの親友二人旅は,砂漠での共産主義者夫婦との出会いで一転します.夫婦は故郷に子どもを残したまま警察から逃れるために各地を転々とし,素性を隠しながら仕事を見つけて生きるために旅を続けていました.「旅するための旅」をしているエルネストはこの二人の置かれた厳しい状況を知り,「最も寒い夜」を経験するのです.そしてその次の日から,主人公の社会に対する認識を反映するかのように作品のトーンも変化します.社会の底辺で不当に搾取されている人々や,ハンセン病のために隔離されている人々は時にモノクロで映し出され,エルネストが語りかけるテーマの調子も一変するのでした(最後まで女性と仲良くすることに熱心な友人アルベルトはそうでもありませんが).
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