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Case
心房細動を有し突然右片麻痺が出現した1例
症例:61歳の女性.
主訴:右片麻痺.
既往歴:5年前より拡張型心筋症,心房細動にてアスピリン内服中.
現病歴:某年某月,18時10分頃,台所仕事中に突然右片麻痺と構音障害が出現,18時55分に救急車で来院.
主訴:血圧142/78 mmHg,脈拍66/分不整.神経学的には,軽度意識障害,軽度失語,構音障害,右上肢は完全麻痺,右下肢は膝立不能を認めた.NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale, J2)15点.頭部CTでは異常なし.
心原性脳塞栓症と考え,t-PA静注療法を発症後2時間20分後より開始した.投与中より右上下肢の挙上が可能となり,1時間後の投与終了時にはNIHSSは7点まで改善した.その後さらに改善し,1カ月後にはNIHSS 3点となり,歩行自立,日常会話に問題ない程度まで改善した.
1995年米国National Institute of Neurological Disorders and Stroke(NINDS)による大規模臨床試験で,発症3時間以内の超急性期脳梗塞患者に対する経静脈的血栓溶解療法(J3)であるtissue plasminogen activator(t-PA)静注療法の有効性が証明され1),t-PAは米国では初めての脳梗塞急性期治療薬として翌年認可された.t-PAの急性期脳梗塞患者における二重盲検試験はそれ以前にわが国で行われ,有効性が示されたが,残念ながら特許の関係で開発が中止されたという経緯がある.1995年にNINDS試験が発表され,米国に続きカナダ,欧州,アジア諸国でt-PAは脳梗塞急性期治療薬として認可されたが,先進国では唯一日本で認可されていなかった.2002年にプラセボを対照としないt-PAのオープン試験(J-ACT)がわが国で行われ2),その結果NINDS試験のt-PA投与群と同等の成績が得られ,2005年10月にようやく認可されるに至った.
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