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◆鉄欠乏性貧血は多彩な症状と身体所見を呈する.いわゆるコモンディジーズであるが,学ぶところは多く,しっかりとした病歴や診察が大切である.
Case
患者:48歳,女性.
主訴:気分不良と全身倦怠感.
既往歴:子宮筋腫(40歳から),妊娠歴なし(既婚).
家族歴:母が人工透析.
生活歴:飲酒および喫煙なし,食事は30歳代から菜食主義(卵,牛乳,肉類は摂らない.organic主義).
月経歴:28日周期で整,期間は7~10日間,月経2~5日目まで出血量は多い.
職業:主婦.
現病歴:30歳代から貧血を指摘されたため鉄剤を処方されるも自己中断し,その後の継続治療は行われていなかった.40歳の時に子宮筋腫を指摘されるが,経過観察していた.3年前から体動時の息切れ,動悸を自覚するようになったが,安静にて軽快するため放置していた.その後も同症状の改善は見られず,さらに全身怠感も持続するようになった.来院の2週間前に,療養目的にて飛行機で暖かい当地へ移住してきた.来院の前日に夕食後より気分不良が出現し,怠感が増悪したため,当院救急室へ歩行受診した.軽度の悪心嘔吐が数回あったが,腹痛なし,下痢や便秘,血便および黒色便などは見られていない.月経は発熱なし,体重減少なし.最近の消炎鎮痛薬の使用や抗菌薬の使用はなし.
来院時身体所見:血圧110/54mmHg,心拍数104/分,呼吸数26/分,体温36.7℃,SpO2 96%(室内気).全身は黄色調に見え,安静にしないときつそうな状態.眼瞼結膜に貧血あり,眼球結膜に黄疸なし,舌乳頭の軽度萎縮,歯牙に異常なし.頸部リンパ節腫大なし,頸部に静脈コマ音聴取.心音は整・収縮期駆出性雑音あり,過剰心音(S3S4)を認めず.肺音は清でラ音を聴取せず.下腹部正中に5cm大の腫瘤を触知する,肝脾腫を認めず,腸蠕動音は正常で圧痛なし,直腸診で異常なし.便潜血は陰性.四肢に圧痕性浮腫を軽度認める.匙状爪を認める.
入院時検査所見:血算;WBC 2,300/μl(Seg 44.0%,Ly 39.0%,Mo 13.0%,Eo 2.0%,Ba 2.0%),RBC 128×104/μl,Hb 2.0g/dl,Hct 7.8%,MCV 61fl,MCH 15.4pg,Plt 27.9×104/μl.生化学;Na 145mEq/l,K 3.4mEq/l,Cl 115mEq/l,BUN 3mg/dl,Cre 0.4mg/dl,AST 17IU/l,ALT 10IU/l,LDH 172IU/l,T-bil0.4mg/dl,Glc 96mg/dl,Fe 5μg/dl(43~156),TIBC 469μg/dl(268~435).
心電図:洞性頻脈.
胸部単純X線写真:図1.
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