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Case
日和見感染症(J1)でHIV感染が判明した1例
患者:37歳,男性.
既往歴:5年前に急性B型肝炎で1カ月入院.
現病歴:2カ月前より倦怠感,1カ月前より咳嗽があり,改善しないため近医を受診したが,胸部X線で異常なしといわれた.しかし1カ月で体重が5kg減少し,咳嗽も改善しないため,当院を紹介された.口腔内に白苔が付着し,やせ気味である以外,所見はなかった.近医で撮影した胸部X線写真に異常所見はみられなかった.
比較的若く,性行為感染症の既往もあるので,HIV感染症も念頭に入れ,さらに問診した.性行為においてのコンドーム使用率は80%くらいで,気をつけているとのことであった.本人の承諾のもとにHIV検査を施行したところ,スクリーニング検査が陽性であった.進行したHIV感染症が疑われたので,拠点病院へ紹介した.
拠点病院で検査したところ,CD4陽性リンパ球数67/μl,HIV-1 RNA 5.6×105copies/mlであった.胸部X線写真は左上中肺野にごく軽度のすりガラス陰影が出現しており,胸部CTにて地図状の濃度上昇がみられ,カリニ肺炎が示唆された.入院後の気管支鏡検査で,カリニ原虫陽性にて確定診断された.カリニ肺炎以外にクリプトコッカス髄膜炎も合併していた.カリニ肺炎は治療により改善し,予防に切り替えた.クリプトコッカス髄膜炎は,治療により8週間後に髄液培養が陰性化し,抗原価も低下した.その時点でテノフォビル+ラミブジン+エファビレンツにて抗HIV療法を開始したところ,免疫再構築症候群(J2)を生じることなく経過し,退院となった.なお,治療継続のため,医療相談員(メディカル・ソーシャルワーカー)に相談し,身体障害者の認定(J3)の手続きを行った.
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