- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Case
19歳女子大学生とその母親
主訴:3カ月間月経がこない.
現病歴:初経14歳.未婚.妊娠・出産歴なし.交際している男性はいる.大学入学後はひとり暮らしで朝食を抜くことが多くなっていた.陸上部に所属しており,ほぼ毎日朝,夕と練習に励んでいる.体重は半年で3kg減少した.大学入学ごろより月経不順で40~50日間隔があくことがあった.最近は3カ月間月経がきていない.このままでは将来妊娠できないのではないか,ととくに母親が心配し,母子で家庭医に相談にやってきた.動悸,発汗,ほてり,乳汁分泌,視野の変化,頭痛はない.
既往歴:特記事項なし,薬剤服用なし.
嗜好歴:喫煙せず,機会飲酒.
家族歴:母は50歳で閉経.
診察所見:身長163cm,体重46kg(BMI 17),女性らしい高い声で話す.眼底に乳頭浮腫なし.甲状腺腫大なし.乳汁分泌なし.頸部・腋窩の色素沈着なし.多毛なし.骨盤部内診にて子宮や付属器に異常所見なし.
検査:妊娠反応陰性,血中FSH正常・LH正常・プロラクチン正常・TSH正常,腟分泌液のクラミジアPCR陰性.
経過:大学入学後のストレス,運動,総摂取カロリーの減少による視床下部性無月経と診断した.栄養,睡眠を規則正しくとり,運動の強度を減らすことで,月経周期が正常になる可能性が十分あり,将来の妊娠も可能であることを説明した.無月経が続くようであれば骨粗鬆症になる危険性もあり,婦人科医と相談してホルモン療法も考慮する必要があることを話した.本人,母親ともに安心し,今後の生活や部活動については改善が必要であることを十分理解したようであった.また,本人には避妊法の確認と性感染症の予防,子宮頸癌検診についても言及した.
プライマリ・ケアにおける月経の問題
普段「月経は面倒なもの」と考えている女性は少なくないが,いざ月経が不規則になったりなくなったりすると,大変不安なものである.また社会で活躍する女性が増加するなか,月経前症候群,月経痛や月経過多に耐えながら出勤する女性も少なくないであろう.月経に関連する問題は,女性のライフスタイルや心理社会学的問題と直結しており,単に疾患概念だけを追っていては女性のQOLの改善には至らない.
本稿では,無月経と月経過多へのアプローチについて述べる.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.