EBM時代の生薬・方剤の使い方 [第1回・方剤編]
十全大補湯
今野 弘之
1
1浜松医科大学外科学第二教室
pp.71-75
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100778
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
十全大補湯は日本における代表的な漢方処方の1つである.歴史的に気血両虚によるきわめて広い病態に用いられてきたが,現代医療においても十全大補湯が適応となる典型的な病態は,体力・気力ともに衰弱した状態であり,膠原病,関節リウマチ,慢性疼痛,血小板減少性紫斑病,再生不良性貧血など多くの疾患に効果が認められている.とくに,癌患者の治療後,すなわち手術,化学療法,放射線療法の後に投与すると,担癌宿主の栄養,免疫能が改善するため好んで処方される.
十全大補湯に関する近年の基礎的,臨床的研究により,術後の合併症の予防やperformance sta-tusの改善,抗癌剤・放射線療法の副作用の軽減,免疫能の改善および末期患者のquality of life(QOL)の向上など,多方面にわたる有用性が認められている.良好なQOLを維持しながら,副作用の少ない治療方法が選択されることが多くなった現代医療において,緩やかに作用し長期投与を原則とする漢方薬に対する期待は大きい.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.