特集 長引く咳
[慢性咳嗽各論]
咳と腹部疾患
酒井 達也
1
1京都大学医学部附属病院総合診療科
キーワード:
慢性咳嗽
,
胃食道逆流症
,
因果関係の疫学
Keyword:
慢性咳嗽
,
胃食道逆流症
,
因果関係の疫学
pp.1030-1033
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100754
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Case
患 者:68歳の男性.
既往歴:冠状動脈疾患に対し,循環器内科から多種類の投薬を受けていた.
現病歴:約1年前から,咽喉に何かがからんだ感じがして,起床から就眠まで咳払いや咳込みが絶えなくなった.咳込みが強い時には失神前兆を伴うほどであった.循環器内科医は何もしてくれず,耳鼻科では咽喉頭の異常はないといわれた.喫煙習慣はなく,内服薬にACEIは含まれず.胸焼けなく,身体所見や胸部X線写真に異常なし.ランソプラゾール30 mgを処方したところ約1週後から咽喉部違和感と咳が減り始め,4週後にはほぼ消失し,患者さんは深い感謝を表明された.
Irwinらによって1977年に提唱されたanatomic diagnostic approachは,慢性の咳に対するアプローチ方法として広く受け入れられている.この方法に従えば,慢性咳嗽の95%以上を解決に導くことができるという.急性上気道炎後の遷延性咳嗽・喫煙者の咳嗽・アンギオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin-converting enzyme inhibitor : ACEI)による咳嗽を除外すれば,身体所見や胸部X線写真に異常を認めない慢性咳嗽の大半は,後鼻漏(post-nasal drip syndrome : PNDS)・気管支喘息・胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease : GERD)・慢性気管支炎(ことに喫煙者)・気管支拡張症によるものであることが報告されている.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.