特集 高齢者と薬
輸液療法
大黒 正志
1
,
森本 茂人
1
,
松本 正幸
1
1金沢医科大学老年病学
キーワード:
高齢者
,
輸液
,
水・電解質異常
,
脱水
Keyword:
高齢者
,
輸液
,
水・電解質異常
,
脱水
pp.963-967
発行日 2003年11月1日
Published Date 2003/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100737
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Case
高カルシウム血症起因性意識障害により,肺炎,高カリウム血症を呈し,輸液療法により緩解した高齢者の1例
患 者:78歳,男性.
既往歴:糖尿病,高血圧,転倒による腰椎圧迫骨折.
家族歴:とくになし.
現病歴:約1年前,転倒による圧迫骨折により歩行不能となり,骨粗鬆症治療目的で以前より投与されていた活性型ビタミンD薬を大量服用し,血清カルシウム値11.3 mEq/lに及ぶ高カルシウム血症により,昏睡状態,肺炎,急性胃出血を発症,血清カリウム値5.2 mEq/l,不整脈を併発.カリウムフリーの輸液,アレンドロネート投与,抗生剤投与により,緩解.その後,電解質正常化,歩行可能となっている.
高齢者における各臓器の機能は若年者に比べて低下する.また,高齢者においては,とくに輸液療法を必要とする疾患,病態が多発する.これは,高齢者では水・電解質異常をきたす原因疾患が増え,また体液ホメオスタシスの維持や調節能の低下のため,内外環境の変化,侵襲により容易にその破綻をきたし,しかも経口摂取不能な例が増えるからである.また,高齢者における水・電解質に対する調節能の低下が,しばしば不適切な輸液による水・電解質異常から心不全などの医原性の病態をひき起こす原因ともなっている.
本稿では,高齢者の輸液に際し,実際面からの留意点・注意事項について以下に概説する.
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