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Case
A型劇症肝炎急性型の1例
患 者:36歳,女性.
主 訴:発熱,全身倦怠感,食欲不振.
現病歴:心窩部不快感を自覚し,第3病日には39℃に至る弛張熱が出現.全身倦怠感と食欲不振が高度となり近医を受診した.感冒と診断され抗炎症薬を投与され,3日後には解熱したが,第5病日に施行した血液検査でAST 3,214 IU/l,ALT 5,376 IU/l,総ビリルビン5.4 mg/dlと肝障害が認められた.第6病日には,ぼんやりとしており,住所や電話番号を答えられないため入院となった.羽ばたき振戦が認められ,肝性脳症は昏睡Ⅱ度,入院時のプロトロンビンは37%,IgM- HA陽性から,A型劇症肝炎急性型と診断された.
既往歴・生活歴:肝疾患なし,輸血歴なし,機会飲酒のみ,海外渡航歴なし,2週間前に生カキを摂取した.
家族歴:肝疾患なし.
劇症肝炎は,初発症状出現から8週以内にプロトロンビン時間が40%以下に低下し,昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症を生じる肝炎で,発症からの期間が10日以内の急性型と11日以降の亜急性型に分類される.先行する慢性肝疾患が認められる症例は劇症肝炎から除外するが,B型肝炎ウイルス(HBV)の無症候性キャリアが急性増悪をきたした場合はこれに含めている.わが国における患者数は年間約1,000例と推定され,急性型と亜急性型はほぼ1 : 1でみられる1).なお,脳症出現までの期間が8~24週間の症例は遅発性肝不全(LOHF : late onset hepatic failure)と診断する.発症頻度は劇症肝炎の約1/10にすぎないが,病態は劇症肝炎亜急性型と類似しており,類縁疾患として扱っている(J1).
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