特集 いま求められる肝炎の知識
肝炎ワクチンの効果
八橋 弘
1
1国立病院長崎医療センター臨床研究センター
キーワード:
HBワクチン
,
一過性感染
,
持続感染
,
HAワクチン
,
経口感染
Keyword:
HBワクチン
,
一過性感染
,
持続感染
,
HAワクチン
,
経口感染
pp.707-709
発行日 2003年8月1日
Published Date 2003/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100678
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B型肝炎ワクチン接種の目的とその対象者
B型肝炎は,その感染様式により一般感染いわゆる一過性感染と,母子感染による持続感染に分かれる.一過性感染は急性肝炎として発症し,ごく一部劇症肝炎として死亡する例がみられる.しかし,大多数例では,一過性感染としてその後治癒し,終生免疫が成立する.これに反し,HBs抗原キャリアでHBe抗原陽性の母親より出生した児では,90%以上の確率で持続感染へ移行し,慢性肝炎,肝硬変,肝癌への推移の可能性を有する重大な感染となる.よってB型肝炎(HB)ワクチン接種の目的は,①主に成人を対象としてB型肝炎の一過性感染(B型急性肝炎)を防止する,②新生児,幼児を対象として持続感染,HBキャリアへの移行を防止する,の2つに大別される.
HBワクチン接種対象者は,HBs抗原・HBs抗体陰性者を対象とする.B型肝炎は,一度罹患すると二度とは感染しない終生免疫が成立する疾患である.したがって,HBV感染のいずれかのマーカーが陽性の場合は対象から外してよい.またHBVは,肝細胞で増殖し血液を循環することより,血液が感染源となる.輸血,医療事故による針汚染,とくに性交渉による感染で高頻度にB型肝炎感染が生じる.よって,これらの汚染源との接触の機会が多い者がHBV感染のハイリスクグループである.一般に,HBVキャリアを配偶者とする者,HBVキャリアと同居する者が最もリスクは高く,次に医師・看護師・検査技師などの医療従事者,さらに消防士・救命救急職員・警察官などがHBV感染のハイリスクグループと考えられている.
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