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Case
めまいと嘔吐を繰り返した25歳女性
患 者:25歳,女性.
主 訴:めまい,吐き気.
既往歴:特記すべきことなし.
家族歴:母親が頭痛もち.
生活歴:ビール大瓶5本/日×7年,喫煙12本/日×8年,経口避妊薬の服用なし.
現病歴:2002年10月上旬頃,下を向いた時に回転性のめまいがあり,安静にして3分ほどで治った.同年12月5日午前10時頃から回転性のめまい,悪心・嘔吐が突然出現した.同時に頭痛がみられ,左後頭部から後頸部にかけてジンジンする痛みであった.耳鳴や難聴はなし.近医を受診したところ,頭位変換性めまいだろうということで帰宅となった.しかし,めまいは治まらず,両手足の脱力,しびれがみられたため救急車にて当院救急室へ搬送となった.もともと頭痛もちで,20歳頃から非拍動性の頭痛が月に数回あった.
入院時現症:血圧120/60 mmHg,脈拍94/分,呼吸数20/分,体温37.4℃.眼瞼結膜は貧血なし.頸部硬直なし.頸動脈領域に雑音なし.心音は整・雑音なし.呼吸音は清.腹部所見上は異常なし.
神経学的所見:脳神経所見;瞳孔左右差なし・左=右=3 mm(対光反射あり).外眼運動は問題なし.左顔面の知覚低下あり.顔面の非対称性なし.聴力問題なし.舌の動きや咽頭に異常所見なし.僧帽筋や胸鎖乳突筋の動き問題なし.ただし,左方注視時に左への水平性眼振あり.徒手筋力テスト;左上下肢の筋力が4-.知覚;左半身の痛覚の低下あり(左上肢5/10,左下肢3/10).深部腱反射は左右差なく,反射の亢進・低下なし.異常反射もみられなかった.
来院時検査所見:心電図;正常範囲内.胸部単純X線写真:異常なし.頭部CT写真:図1, 図2.
今回の症例はめまいと嘔吐を主訴に来院したが,その経過の中で筋力の低下,知覚の低下および頭痛を伴っていた.近医を受診した際には,年齢も若く,以前に一度めまいの既往もあることから,頭位変換性めまいなどのいわゆる末梢性めまいと診断されすぐに帰宅となった.しかし,当院救急室を受診した時には,立位保持が困難であるだけではなく,左半身不全麻痺,頭痛も伴っていた.持続するめまいや神経症状を伴うことから,初診医は若年発症の脳血管障害として,①椎骨脳底動脈解離,②脳出血(動静脈奇形に伴う),③くも膜下出血を疑い,緊急CTをオーダーした.しかし,頭部CT上は明らかな出血や梗塞を思わせる所見はみられなかった(図1,2).
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