プライマリ・ケアのリスクマネジメント[9]
抗菌薬注射直後のアナフィラキシーショック
長野 展久
1
1東京海上日動メディカルサービス/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科司法医学
pp.418-422
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100105
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2004年10月に日本化学療法学会から,『抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン』が公表されました1).それによると,これまで慣習化していた抗菌薬投与前の皮内反応は,アナフィラキシー発現の予知として有用性が乏しいと結論付けています.具体的には,アレルギー歴のない不特定多数の症例には,皮内反応の有用性はないとする一方で,病歴からアレルギーが疑われる患者に抗菌薬を投与する場合には,あらかじめ皮内反応を行ったほうがよいという考え方です.その結果,大多数の症例で抗菌薬投与前の皮内反応が不要となり,医療スタッフにとって負担が少なくなったというプラスの面もありますが,それと同時に,ガイドラインの解釈をめぐって新たな混乱をもたらすような状況となりました.なぜなら,ガイドラインには,「抗菌薬投与開始から投与終了後まで,患者を安静の状態に保たせ,十分な観察を行うこと.とくに,投与開始直後は注意深く観察すること」と記載され,これを換言すると,「抗菌薬投与開始直後は(すべての)患者に付きっきりで観察をしなさい」という解釈にもつながりかねないからです.
そして2004年9月7日,抗菌薬投与直後にアナフィラキシーショックを発症して死亡した訴訟事例に対し,最高裁判所はまるでガイドラインを先取りしたような判断を示しました.その内容をみると,実際の医療現場にはそぐわない面も多々あると考えられますので,一審,二審,最高裁の考え方を詳細に検討してみたいと思います.
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