総合外来
クロナゼパムが奏効した老年期うつ病の1例
藤田 佳嗣
1,2
,
井上 顕
3
,
高桑 俊文
4
1聖マリアンナ医科大学呼吸器感染症内科
2前東横恵愛病院
3三重大学大学院医学系研究科精神病態科学講座
4聖マリアンナ医科大学東横病院
pp.408-410
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100102
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老年期うつ病の薬物治療
老年期うつ病においても基本的な治療方針は一般のうつ病と変わらない.薬剤の投与法としては少量の抗うつ薬から開始,徐々に増量することで副作用を最小限にとどめるように注意し,投与量は通常の成人量の1/2を目安とする.加齢の影響で肝臓の薬物代謝速度の低下および腎臓の濾過機能の低下が存在する可能性が高く,血中薬物濃度が上昇しやすいためである1).
最近の老年期うつ病における基本的な治療薬選択はSSRIのフルボキサミン・パロキセチン,SNRIのミルナシプラン,非定型抗うつ薬のトラゾドンであり,それらが無効の場合に三環系抗うつ薬もしくは四環系抗うつ薬を選択する1).しかし,本症例のように基本的な治療薬選択にて軽快しないことがしばしばみられる.そのような場合,老年期うつ病ではうつ状態,不眠に加え,過度の不安感・心気感を認めるため,抗うつ作用・抗不安作用・適度な鎮静作用をもち,副作用も少なく,比較的効果発現も早いといわれている抗てんかん薬のクロナゼパムが有効である.森下は100症例の遷延性うつ病にクロナゼパムを投与し検討した結果,クロナゼパム3.0mg/日が推奨される量であるが,クロナゼパム0.5~3.0mg/日にて高い有効率を示したと報告している2).すなわち,少量の薬剤投与量から開始すべき高齢者では,クロナゼパムを使用する際,0.5mg/日前後から開始し,必要であれば徐々に増量する.また,クロナゼパムはSSRIを強化する作用があるため,SSRIとの併用も本疾患における治療選択の1つとなる.
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