老年期うつ病の自己臭妄想に対してmirtazapineが奏効した1例

Mirtazapine Improved Olfactory References Syndrome in an Elderly Patient with Depression: A case report

抄録

　自己臭妄想を唯一の主訴とし単一症候的に経過する症例は，わが国では自己臭妄想症と呼ばれ，恐怖症・強迫症，対人恐怖症，統合失調症，パラノイア，心気症あるいはうつ病といった精神疾患と接点を持つものとされる。自己臭妄想に対する薬物療法は，抗うつ薬や抗精神病薬が用いられるが，効果については一定の見解が得られていない。今回我々は，老年期心性に端を発した自己臭妄想を伴った老年期うつ病患者に対して，mirtazapine 45mg/日を投与し，妄想の改善を認めた症例を経験した。自己臭妄想は種々の精神疾患から生じるが，主に思春期の疾患とされており，老年期における治療は確立されていないため，貴重な臨床経験となった。