特集 外来診療の質を評価する
2型糖尿病診療の質評価
林野 泰明
1
1京都大学大学院医学研究科臨床疫学
キーワード:
慢性疾患
,
合併症
,
患者アウトカム
,
診療プロセス
Keyword:
慢性疾患
,
合併症
,
患者アウトカム
,
診療プロセス
pp.210-213
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100075
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疾患のインパクト,重要性,評価指標
2002年に行われた糖尿病診療実態調査(J1)の結果によると,糖尿病が強く疑われる(HbA1cの値が6.1%以上,または質問票で「現在糖尿病の治療を受けている」と答えた)人の数は740万人であり,1997年に行われた調査と比較すると50万人も増加していた.糖尿病が高齢者に多い疾患であることを考えると,今後も増加の一途を辿ることが予測される.
慢性疾患である糖尿病は,さまざまな合併症を介してわが国の医療システムに多大な負担を与えている.たとえば,新規の透析導入患者の最多原因(約40%)は糖尿病腎症であり,糖尿病網膜症は成人の失明の最も多い原因である.この10年の間に,血圧コントロールや高脂血症治療,血糖コントロールに関する大規模試験が行われ,これらのエビデンスに基づいた医療を行えば罹患・死亡率を減少させ,しかも医療コストを減らせることがわかってきた.2型糖尿病患者110人を対象にして行われたランダム化比較試験である熊本スタディー(J2)では,HbA1cを1%低下させることにより,網膜症や腎症の発症や進行のリスクを約30%減らせることが明らかになった(表1)1).わが国においてもこのようなエビデンスが出揃ってきたことは,糖尿病が医療システムに与える負担を軽減するために重要な意味を持つ.
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