EBM時代の生薬・方剤の使い方[13][方剤]
補中益気湯
黒岩 中
1
,
劉 新瑜
2
1福岡大学医学部微生物・免疫学教室
2福岡天神南クリニック
pp.79-81
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100042
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補中益気湯は本邦で処方される漢方補剤のなかでも代表的なもので,体力,気力が衰えた時に著効を示すとされ,「医王湯」との別名もある.もとは中国・金元期の四大家の1人,李東垣(1180~1251)の『内外傷弁惑論』(1247)と『脾胃論』(1249)を出典としている.当時の中国は金と元とがたびたび干戈を交える戦乱の時代で,社会不安のなか国民は疲労疲弊し,飢餓・栄養失調で日々多くの人々が死亡していった.李杲(東垣)はそれらの様子を直接見聞きしたことから,疾病の多くは傷寒などの外傷病(張仲景:傷寒雑病論による)だけでなく,栄養失調・飲食の不摂生・ストレスなどから起きる脾胃の損傷から来る内傷学説を提唱している.つまり,脾・胃が人体のなかで最重要の働きをしており,その健康が元気の源であるとされる.補中益気湯はまさに彼の理屈で創方されており,名のとおり,中(脾胃:消化器)を補い,元気を益する生薬が調合される.
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