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症例提示
■症例1
患者:75歳の女性.
主訴:下肢の浮腫.
既往歴:糖尿病;経口血糖降下薬使用中,糖尿病腎症・網膜症なし.その他に特記すべき疾患なし.
処方歴:グリベンクラミド(ダオニール(R))1.25mg/日,ピオグリタゾン(アクトス(R))15mg/日.
現病歴:10日前から両下肢の浮腫,体重増加を自覚.心不全症状なく,日常生活での障害なし.症状軽快せず外来受診した.両下肢の圧痕性浮腫あり.約2カ月前より,ピオグリタゾン(アクトス(R))15mgが開始されていた.
診断:高齢者の場合,加齢や合併疾患によりさまざまな臓器障害から浮腫が生じることがある.現病歴より薬剤性が疑われるケースであるが,糖尿病腎症からのネフローゼ症候群,心機能低下による浮腫など器質的疾患を鑑別しなければならない.胸部X線写真上,心拡大や胸水貯留はなく,心エコーでは心機能正常,尿検査では蛋白尿が認められなかった.最終診断としてピオグリタゾンによる薬剤性浮腫が考えられた.
■症例2
患者:75歳の女性.
主訴:下肢の浮腫,体重増加.
既往歴:高血圧(+),糖尿病(-),高脂血症(-).くも膜下出血;3年前クリッピング(+).骨粗鬆症;他院にて治療中.
アレルギー歴:テトラサイクリン,ヨード.
処方歴:アレンドロン酸(ボナロン(R))5mg/日,アルファカルシドール(アルファロール(R))0.5mg/日,ランソプラゾール(タケプロン(R))15mg/日,アムロジピン(ノルバスク(R))5mg/日.
現病歴:来院3カ月前より下肢のむくみが出現.昼に増悪し,夜は下肢挙上により軽快している.体重2kgの増加があるが,息切れ,労作時呼吸苦なし.1週間前に通院中の医院を受診し,問題ないとされたが,不安が増大したため当院内科の新患外来を受診した.両下肢に圧痕性浮腫(左側がやや強い),軽度の発赤あり.
診断:わずかに左右差のある浮腫が認められ,症例1と同様に,浮腫をきたす疾患としてネフローゼ症候群や深部静脈血栓症,慢性心不全を疑い精査を行った.とくに異常を指摘できなかったため,担当の研修医より相談を受けた.この症例のように,他院で治療中の場合で,診断に迷う症例では,詳細な治療内容や経過を把握することが重要である.指導医の問診により,アムロジピン開始直後より浮腫が生じたことが判明した.研修医は,これらの薬剤で起こりうる浮腫に関する知識を持っていなかったが,常に薬剤の副作用に関して注意を払うことで,より診断能力を向上できるであろう.
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