増刊号特集 泌尿器科 病棟管理マニュアル
Ⅴ.術前・術後1週間の患者管理
腎移植術
白木 良一
1
,
星長 清隆
1
Ryoichi Shiroki
1
,
Kiyotaka Hoshinaga
1
1藤田保健衛生大学泌尿器科
pp.260-266
発行日 2002年3月30日
Published Date 2002/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413904616
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1 はじめに
腎移植における術前後管理は一般の外科手術に加え,患者が透析を必要とする慢性腎不全であり種々の合併症を伴うことが多く,術後は拒絶反応や無尿期間に対する対処,感染症に対する予防,免疫抑制剤の副作用対策など,移植に特異的な周術期管理が必要である。また,術後の体液バランス調節が移植腎機能に依存するという特殊な状況にあるため,透析を含めた術後の輸液療法などには細心の注意が必要である。
同じ腎移植術でも,移植腎が生体腎と献腎では周術期の管理および状況が著しく異なる。生体腎では術前に安全確認のためのワークアップに十分な時間的余裕があり,術後も一般的にはほぼ全例で利尿が得られるのに対し,心停止ドナーからの献腎移植では手術前には時間的な制約があり,適応の決定が困難な場合も多い。また,術後は約80%の症例で急性尿細管壊死(遅延型腎機能発現:delayed graft function)による無尿期間を伴い,透析離脱までに平均約13日間を要する1)。その上,レシピエント選択基準の上位に待機期間があるため,昨今では高齢かつ長期透析患者が選択される場合が増加している。これらハイリスク・レシピエントに対し,腎移植術後に血液透析を施行しつつ術後管理を行うため,様々な合併症,特に循環動態などには十分留意する必要がある。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.