増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅵ.メディカルエッセイ
尿道造影と前立腺肥大症の話
名出 頼男
1
1藤田保健衛生大学医学部泌尿器科
pp.342
発行日 1999年3月30日
Published Date 1999/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902625
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尿道造影は,私たちが入局した頃は主として前立腺肥大症患者が対象で,逆行性に造影剤を注入する方法に限られて行われていた。今日でもこれが主体で行われるが,ほとんど前部尿道狭窄を見るぐらいの役にしか立たない。当時は先輩に逆行性造影の写真を見せられて,内尿道口が狭く見え,造影剤が膀胱内にジェット流様に吹き上げるのを見て膀胱頸部が狭くなっていることの証左として教えられていた。しかし,この現象はほとんどが反射的に内尿道口を収縮させた結果起こっているもので,その証拠に排尿時に撮影してみると,内尿道口が開大して見える例が多く,また逆行性操作で同じように見える症例でも症例ごとに開き方が大きく異なっていることから,決して器質的な病態によって起こっているものではないことがよくわかる。こうしてみると,逆行性尿道造影のみで診断をしていたことは,何のことはなく単に手抜き作業による誤診に過ぎなかったのだということになる。
また内視鏡的には,膀胱頸部硬化症(この名称あるいは病態は,かつて本邦では土屋文雄先生が東京逓信病院の現役でおられた頃によく口にされていたが,アメリカ医学ではいまだこのままのものとして認知されてはおらず,英国で膀胱頸部線維化症として文献に記載がある程度であった。
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