増刊号特集 膀胱全摘除術と尿路変向術のすべて
Ⅵ 術後管理と合併症対策
3.術中合併症とその対策
腸管損傷とその対策
金山 博臣
1
Hiro-omi Kanayama
1
1徳島大学医学部泌尿器科
pp.263-269
発行日 1998年3月30日
Published Date 1998/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902301
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はじめに
膀胱全摘除術時の術中合併症としての腸管損傷はそれほど頻度は高くないが,泌尿器科医にとっては普段あまり扱わない臓器であるため,損傷に気づかなかったり不適切な処置を施し,糞瘻や腹膜炎,敗血症など重大な結果を招く恐れがあり,場合によっては生命にかかわることもある1〜6)。しかし,CTやMRIなどの画像診断技術の向上により術前診断が正確に行われるようになったため,術中に直腸浸潤やS状結腸,小腸への思わぬ浸潤から腸管を損傷することはほとんどみられなくなった,また,手術手技の向上にともない,不用意な術中操作による腸管損傷にもほとんど遭遇しなくなった。
しかし,術前診断が100%正確に行われるわけではなく,また手術手技に習熟していない研修医が執刀した場合に思わぬ直腸損傷などを引き起こすこともある。さらに,膀胱癌に対する温存治療や,骨盤内手術,放射線照射の既往がある場合などは,周囲組織との癒着が強いことが多く,腸管損傷の危険性も高くなる1)。腸管損傷時には腸管の手術に習熟した外科医とともに損傷に対応し,最も適切な処置を行うべきであるが,必ずしも外科医の応援を受けられるとは限らない。したがって,不意の術中腸管損傷に対して適切な処置を施すためには,常日頃より腸管損傷を念頭に置き,その対応に習熟しておく必要がある。
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