今月の臨床 安全な腹腔鏡下手術をめざして
腹腔鏡下手術合併症の予防と対策
腸管,腸間膜の損傷
藤井 俊策
1
,
木村 秀崇
1
1弘前大学医学部産婦人科学教室
pp.332-337
発行日 2005年3月10日
Published Date 2005/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100201
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はじめに
2004年に内視鏡外科学会,産科婦人科内視鏡学会,ならびにEndourology・EDWL学会会員を対象に行われた内視鏡外科手術に関するアンケート調査1)によれば,産婦人科領域の腹腔鏡下手術における他臓器損傷の発生率は0.25%(203/79,330件),400件に1件の頻度である.これには,尿管損傷など腸管以外の損傷も含まれている.海外の文献を集計したレビュー2)では,腸管損傷は産婦人科領域で0.1%(135/132,610件),腸管穿孔は外科領域を含めて0.22%(66/29,532件)の頻度と報告されている.診断的腹腔鏡であっても,0.07%(34/46,890件)の頻度で腸管損傷が発生している.また,腸管損傷例の死亡率は3.6%(16/450例)であり,前述のアンケート調査でも消化管穿孔で死亡した子宮筋腫症例が報告されている.
このように,腸管損傷は決して稀ではなく,死に至ることもある重篤な合併症であることを認識する必要がある.
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