Coffee Break
たかが前立腺全摘,されど……
荒井 陽一
pp.198
発行日 1996年3月30日
Published Date 1996/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901761
- 有料閲覧
- 文献概要
筆者が10数年に前立腺全摘術を行ったときに参考にした某手術書には実に印象的な記載がある。「……the urethra is then transected, the procedure often performed in the blood pool……」。当時,前立腺尖部の処理はいわば「血の海」の中で盲目的になされることが多く,当然,術後に尿失禁を来す頻度も多かった。
サントリーニ静脈叢に対するanatomical approach については1979年にReiner and Walshによって発表されていた。しかしこの方法が真に理解されて手術が安全なものになったのは比較的新しい。筆者自身も当時この論文を読んではいたが,しばしば大出血に悩まされた。というのも原著に書かれた手術操作のイラストは多分に概念的であまり親切なものとはいえなかった。数年後に再度読みなおし,「・・the complex is 1 to 2cm thick・・・・」の記載を"再発見"して目から鱗が落ちる思いがしたのを記憶している。すなわちdorsal veinはcomplexを形成しており,たいへんぶ厚いということがこの一行に凝縮されていたのである。Compbell's Urology第6版では,前立腺尖部の付近の処理についての記載が大きく改められた。
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.