ジュネーブからのメッセージ
たかがMDGsされどMDGs
中谷 比呂樹
1
1WHO事務局
pp.691
発行日 2013年8月15日
Published Date 2013/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102820
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21世紀を希望に満ちた世紀にしようとして,国連がミレニアム開発目標(millennium development goals;MDGs)を作ったのは2000年であるが,その目標期日まであと1,000日を切った.MDGsは以下の8つの目標を掲げており2015年を達成期限としている.目標①極度の貧困と飢餓の撲滅,目標②初等教育の完全普及,目標③ジェンダー平等推進と女性の地位向上,目標④乳幼児死亡率の削減,目標⑤妊産婦の健康の改善,目標⑥HIV/エイズ,マラリア,その他の疾病の蔓延の防止,目標⑦環境の持続可能性確保,目標⑧開発のためのパートナーシップの推進,である.
これらの目標は,ある種の枠組みとして先進国・途上国を問わずすべての国に受けいれられ,過去15年で世界の健康状況の劇的な改善に結びついている.つまり,エイズ・結核・マラリアといった三大感染症は減少傾向に転じ,西アフリカの河川地域で流行していたオンコセルカ症が減少したため,肥沃ながら耕作放棄されていた地域が豊かな農耕地となって貧困を軽減し(目標①),小児の寄生虫駆除事業は欠席児童の激減と学力の向上をもたらしている(目標②).こうして健康改善の広範な社会的効用が実証されたのがMDGsの本質である.しかし,これらは遠いアフリカだけの話なのだろうか.
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