Coffee Break
膀胱の褐色細胞腫
金武 洋
pp.194
発行日 1996年3月30日
Published Date 1996/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901759
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内分泌疾患に興味を持っているが,膀胱原発の褐色細胞腫はまだ経験がなかった。一度は診断を付けたいと考えていたが,その機会に恵まれたので紹介する。腎不全患者を主に治療している関連病院の泌尿器科医より,狭心症を合併した63歳男性の膀胱前壁に存在する膀胱腫瘍の治療を依頼された。患者は約20年前より狭心症,高血圧,前立腺肥大症の診断で内科および泌尿器科で治療を受けてきた。冠動脈造影では,冠れん縮型狭心症と診断され,器質的異常は否定されている。内科の主治医が前立腺肥大症(排泄性腎盂造影で膀胱底部が挙上されており,この診断で矛盾はない)の治療薬としてハルナール®を投与したところ,一時劇的に症状の消失があった。本人の話では排尿後にしぼるような下腹部不快感,尿道痛と共に頻脈発作が起こるので排尿するのが恐怖であった。これはと思い,すぐに排尿前後の血中カテコールアミンを測定するとノルアドレナリン1550(前),1950(後)pg/mlと上昇していた。膀胱部分切除を施行し,排尿するのが恐くなくなったと感謝された。腫瘍は膀胱頸部の前壁にある粘膜下腫瘍で径4cm,重さ31gであった。
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